愛知県犬山市に位置する犬山城は、国宝に指定された現存12天守のひとつとして、多くの観光客を魅了し続けています。木曽川のほとりにそびえる美しい天守閣と、歴史情緒あふれる城下町の街並みは、日帰り観光にぴったりのスポットです。本記事では、犬山城観光を存分に楽しむための見どころやアクセス情報、周辺の魅力的なスポットまで、詳しくご紹介していきます。
犬山城とは?国宝五城に数えられる現存天守の魅力

愛知県犬山市に位置する犬山城は、日本に現存する12の天守のうちの一つであり、国宝に指定された五城の一角を占める貴重な城郭です。姫路城、松本城、彦根城、松江城と並んで「国宝五城」と呼ばれており、その歴史的価値は非常に高いとされています。
犬山城は木曽川沿いの小高い丘の上に建ち、その優美な姿から「白帝城」という別名でも親しまれています。この名称は、中国の詩人・李白が詠んだ「早発白帝城」に由来するものと言われています。白い漆喰の壁と木曽川を見下ろす立地が、まるで中国の白帝城のような風情を醸し出していることから、江戸時代の儒学者・荻生徂徠がこの名を付けたとされています。
天守閣は地上三層四階、地下二階の構造で、高さは石垣を含めて約24メートルに達します。外観は三層に見えますが、実際には四階建てという「望楼型」と呼ばれる建築様式が採用されています。この望楼型天守は、入母屋造り二階建ての建物の上に望楼を乗せた形式であり、日本の城郭建築における古い様式を今に伝えているのです。
国宝指定の経緯と歴史的価値
犬山城の天守は、昭和10年(1935年)に当時の国宝保存法に基づいて国宝に指定されました。その後、昭和27年(1952年)に文化財保護法が施行された際に改めて国宝として再指定を受け、現在に至っています。国宝に指定された理由としては、現存する天守の中でも特に古い時代の建築様式を残していること、そして長い歴史の中で大規模な改変を受けることなく原形を保ってきたことが挙げられています。
2021年3月に行われた年輪年代法による分析調査では、天守の1階から4階までが天正13年(1585年)からの3年間に伐採された木材を使用して一度に建設されたことが判明しました。この調査結果により、犬山城天守が約440年もの間、その姿を保ち続けてきたことが科学的にも証明されたのです。
天守の建築様式と特徴的な装飾
犬山城天守の外観には、いくつかの特徴的な装飾が施されています。南北には弓なり状の「唐破風(からはふ)」、東西には三角形の「入母屋破風(いりもやはふ)」が取り付けられており、これらが天守の優美な外観を形作っています。
また、壁の造りにも注目すべき点があります。1階と2階は柱が外側から見えない「大壁造り」が採用されている一方、最上階である4階は柱や梁を見せる「真壁造り(しんかべづくり)」となっています。この違いは、城の防御性と格式を両立させるための工夫とされています。
廻縁から望む360度の絶景
犬山城天守の最大の魅力の一つが、最上階に設けられた「廻縁(まわりえん)」です。これはベランダのような回廊で、その外側には「高欄(こうらん)」と呼ばれる手すりが巡らされています。この廻縁に出ると、360度の絶景を楽しむことができるのです。
北側には雄大な木曽川が流れ、その先には御嶽山や岐阜城を望むことができます。南側に目を向ければ、広大な濃尾平野が広がり、晴れた日には名古屋駅のビル群まで見渡せると言われています。このように天守の外に出て一周できるのは、国宝五城の中では犬山城と高知城だけという貴重な体験となっています。
個人所有から財団への移管
犬山城は、2004年(平成16年)3月まで成瀬家による個人所有が続いていたことでも知られています。江戸時代から約400年にわたって一つの家系が城を所有し続けるという、日本の城郭史においても極めて珍しいケースでした。2004年4月に成瀬家から「財団法人犬山城白帝文庫」に寄贈され、現在は公益財団法人として城の保存と公開が行われています。
白帝城という別名の由来
「白帝城」という優雅な別名には、深い文化的背景があります。中国・長江沿いにある白帝城は、李白の詩「早発白帝城」で詠まれた名勝として知られています。木曽川を長江に、そして丘上に建つ犬山城を白帝城に見立てた荻生徂徠の感性が、この名を生み出したとされています。
この別名は、犬山城が単なる軍事施設ではなく、文化的・美的価値を持つ存在として認識されてきたことを物語っています。現在でも「白帝城」の名は、城を管理する「犬山城白帝文庫」の名称に受け継がれています。
犬山城の歴史を紐解く~築城から現代まで~

犬山城の歴史は、戦国時代の動乱期にまで遡ります。その長い歴史の中で、数多くの武将たちがこの城を舞台に活躍し、時代の変遷とともにその役割も変化してきました。ここでは、犬山城の歴史を時代ごとに詳しく見ていきましょう。
織田信康による築城と戦国時代
犬山城の築城は、室町時代の天文6年(1537年)頃とされています。築城者は織田信康(織田信長の叔父)で、木之下城から現在の場所に城を移したのが始まりと伝えられています。当時のこの地域は、尾張国と美濃国の国境に位置する戦略的要衝であり、軍事上の重要拠点として城が築かれたのです。
織田信康は天文13年(1544年)に斎藤道三との戦い(加納口の戦い)で戦死し、その子・織田信清が城主となりました。その後、犬山城は織田信長、豊臣秀吉、徳川家康といった天下人たちに関わる歴史の舞台となっていきます。
【豆知識】織田一族と犬山城
犬山城は「織田家の城」としての側面を持っています。築城者の織田信康は信長の叔父であり、その後も織田一族の間で城の支配権が移り変わりました。若き日の信長もこの城に関わりを持っていたとされ、犬山城は織田家の歴史を語る上で欠かせない存在となっています。
小牧・長久手の戦いと犬山城
天正12年(1584年)に起きた小牧・長久手の戦いでは、犬山城は重要な役割を果たしました。この戦いは、羽柴秀吉(後の豊臣秀吉)と徳川家康・織田信雄連合軍との間で繰り広げられた大規模な合戦です。犬山城は秀吉方の拠点として使用され、この地域一帯が激しい戦闘の舞台となりました。
この戦いを通じて、犬山城の戦略的重要性が改めて認識されることとなりました。木曽川を天然の堀として利用できる地形と、濃尾平野を一望できる高台という立地条件が、軍事上の要衝としての価値を高めていたのです。
成瀬家による統治の始まり
江戸時代に入ると、犬山城の歴史は新たな局面を迎えます。元和3年(1617年)、尾張藩付家老の成瀬正成が徳川秀忠から犬山城を拝領しました。成瀬正成は永禄10年(1567年)に成瀬正一の長男として誕生し、小牧・長久手の戦いが初陣という経歴を持つ武将でした。
以後、成瀬家は江戸時代を通じて9代にわたり犬山城主を務めることとなります。「付家老」とは、徳川御三家に付けられた重臣のことで、成瀬家は尾張徳川家を支える重要な役割を担っていました。この時代、犬山城は軍事施設としてよりも、城下町を治める行政の中心としての機能が重視されるようになっていきます。
江戸時代の犬山城と城下町の発展
成瀬家の統治下で、犬山城と城下町は大きく発展しました。城下町は計画的に整備され、商人や職人が集まる活気ある町として栄えていきます。現在も残る城下町の町割り(町の区画)は、この時代に形成されたものと言われています。
また、この時代には木曽川を利用した物資の輸送が盛んに行われ、犬山は交通の要衝として経済的にも発展しました。城下町には多くの商家が軒を連ね、その繁栄ぶりは現在に残る歴史的建造物からも窺い知ることができます。
明治維新後の犬山城
明治維新を迎えると、多くの城郭が廃城令によって取り壊されていく中、犬山城は数奇な運命をたどります。明治4年(1871年)の廃藩置県後、犬山城は一時的に愛知県の所有となりましたが、明治24年(1891年)の濃尾地震で天守の一部が損壊してしまいます。
その後、愛知県から旧城主である成瀬家に城が譲渡され、成瀬家の手によって修復が行われました。この判断により、犬山城は現在まで天守を残すことができたのです。成瀬家による個人所有は、2004年まで続くこととなります。
近現代の保存活動と現在
昭和に入ると、犬山城天守は国宝に指定され、その文化財としての価値が公に認められました。その後も度重なる修復工事が行われ、現在の美しい姿が保たれています。2004年には成瀬家から財団法人犬山城白帝文庫に寄贈され、公益財団法人として広く一般に公開されるようになりました。
現在、犬山城は年間を通じて多くの観光客を迎え入れており、日本の城郭文化を伝える重要な観光資源となっています。国宝としての価値を守りながら、次世代に歴史を伝える役割を担い続けているのです。
犬山城天守閣の内部見学ガイド
犬山城を訪れたら、ぜひ天守閣の内部を見学することをおすすめします。約440年の歴史を持つ現存天守の内部には、当時の建築技術や城の防御機能を示す様々な見どころが残されています。ここでは、天守閣の見学ポイントを階層ごとに詳しく解説していきます。
地階と1階の見どころ
天守閣への入口から入ると、まず地階に降りることになります。地下1階と地下2階は、主に倉庫として使用されていた空間とされています。石垣の内部に造られた地階は、薄暗く独特の雰囲気を持っており、城の基礎構造を間近に見ることができます。
1階に上がると、西南部には「上段の間」と呼ばれる部屋があります。これは天守内で唯一の畳敷きの部屋で、床の間や袋棚、違い棚などが設けられた格式の高い空間です。城主が使用した部屋とも言われており、当時の生活の一端を垣間見ることができます。
また、1階西側には「石落の間」があります。ここには窓が開き戸として設置されており、城に侵入しようとする敵に対して石を落としたり、弓矢で攻撃したりするための防御機能を担っていました。戦国時代の城郭建築における実用的な工夫を見ることができる場所です。
急勾配の階段を上る体験
犬山城天守を見学する上で、避けて通れないのが急勾配の階段です。各階をつなぐ階段は、現代の建築基準からすると非常に急で、その傾斜角は以下のようになっています。
| 区間 | 傾斜角 |
|---|---|
| 地下2階→地下1階 | 約59度 |
| 地下1階→1階 | 約47度 |
| 1階→2階 | 約56度 |
| 2階→3階 | 約45度 |
| 3階→4階 | 約54.6度 |
このような急な階段が設けられた理由は、敵の侵入を防ぐためとされています。急勾配の階段は上りにくく、攻め込んできた敵兵の進軍を遅らせる効果があったのです。見学の際は、手すりをしっかりと持ち、足元に注意しながら上り下りすることが推奨されています。
中層階の展示と構造
2階と3階は、主に武器庫や武者溜まりとして使用されていた空間です。現在は、犬山城の歴史や構造に関する解説パネルが設置されており、城の成り立ちや建築技術について学ぶことができます。
特に注目すべきは、柱や梁などの構造材です。約440年前の木材がそのまま使用されている部分も多く、当時の匠の技術を直接目にすることができます。木材の表面には、長い年月を経た独特の風合いがあり、歴史の重みを感じさせてくれます。
最上階(4階)の赤絨毯と眺望
最上階である4階は、犬山城見学のハイライトとも言える場所です。この階には赤い絨毯が敷かれており、他の階とは異なる華やかな雰囲気を持っています。この赤絨毯については、七代城主の成瀬正壽がオランダ商館長と親交があったことから入手したものという言い伝えがあります。
最上階からは、前述の廻縁に出て360度のパノラマビューを楽しむことができます。北には木曽川と御嶽山、南には濃尾平野が広がり、天候が良ければ遠くの山々まで見渡すことができます。この眺望こそが、犬山城観光の醍醐味と言えるでしょう。
【見学時の注意点】
- 階段が急なため、動きやすい服装と靴での来城がおすすめです
- 廻縁は高所であり、手すりの高さが低いため、小さなお子様連れの方は特に注意が必要です
- 混雑時は天守入場まで待ち時間が発生することがあります
- 靴を脱いで入場するため、脱ぎ履きしやすい靴が便利です
見学所要時間の目安
犬山城天守の見学所要時間は、一般的に30分から40分程度が目安とされています。ただし、週末や祝日、桜や紅葉のシーズンには混雑が予想され、天守への入場待ちで1時間以上かかることもあります。時間に余裕を持った計画を立てることをおすすめします。
じっくりと見学したい場合は、平日の午前中に訪れるのが最適です。開城時間の9時に合わせて到着すれば、比較的空いた状態で見学を楽しむことができるでしょう。
犬山城下町の魅力と食べ歩きスポット

犬山城の観光において、城下町の散策は欠かせないプログラムです。江戸時代と変わらない町割りが現存する犬山城下町は、歴史的な建造物と現代的なグルメ店が調和する独特の雰囲気を持っています。近年では「串グルメのまち」としても知られ、食べ歩きを楽しむ観光客で賑わっています。
城下町の歴史と町並み
犬山城下町は、江戸時代に成瀬家の統治下で計画的に整備された町です。現在も当時の町割りがそのまま残されており、歴史的建造物が立ち並ぶ風情ある景観を楽しむことができます。本町通りを中心とした約400メートルの区間には、江戸時代から昭和時代にかけての建物が混在し、時代を超えた町並みの変遷を感じることができます。
特に注目すべきは、国の登録有形文化財に指定されている建物です。商家や町家の建築様式を残す建物が点在しており、往時の繁栄ぶりを今に伝えています。町歩きをしながら、これらの歴史的建造物を見つけるのも楽しみ方の一つです。
人気の串グルメと名物料理
犬山城下町は「串グルメのまち」として、多彩な串料理を提供する店舗が軒を連ねています。味噌田楽、五平餅、串カツなど、伝統的な串料理から創作串グルメまで、様々な味を楽しむことができます。
中でも「山田五平餅」は、「犬山串キング」の初代王者に輝いた人気商品として知られています。店舗の建物自体が国の有形文化財に指定されている老舗で、歴史を感じながら味わう五平餅は格別の味わいがあります。
また、「あっぱれ本舗」のだし巻きたまごも人気の一品です。ふわふわの食感と、かつおなど魚介の天然出汁が効いただしスープにつけて食べるスタイルが特徴的です。
フォトジェニックなスイーツ
城下町では、SNS映えする華やかなスイーツも人気を集めています。「茶処くらや」の「恋小町団子」は、犬山城下町の名物として絶大な人気を誇る一品です。豊橋市の老舗製菓店から取り寄せたお団子に、フルーツあんや季節あんをふんだんに使用したカラフルな見た目が特徴です。
「ココトモファーム」の米粉バウムクーヘンは、犬山のお米農家が作るグルテンフリーのスイーツとして注目されています。また、「芋カフェ えん」の紫いもシェイクは、透明なカップに鮮やかな紫色のシェイクが入った見た目でフォトジェニックな一品となっています。
昭和横丁とレトロな雰囲気
城下町の一角にある「昭和横丁」は、レトロな雰囲気を楽しめるスポットです。昭和の懐かしい雰囲気を再現した空間には、ハートのアイスやカラフルな串団子など、SNSに映える写真撮影を楽しめる店舗が並んでいます。
若い世代から年配の方まで、幅広い年齢層に人気のエリアとなっており、食べ歩きだけでなく、ノスタルジックな写真撮影スポットとしても楽しまれています。
食べ歩きのおすすめ時間帯
城下町での食べ歩きを楽しむなら、11時頃からがおすすめです。この時間帯になると多くの店舗が開店し始め、新鮮な料理を味わうことができます。平日であれば比較的ゆっくりと回ることができますが、土日や祝日はかなり混み合うため、少し早めに到着しておくと余裕のある食べ歩きを楽しめるでしょう。
城下町の散策には約1時間30分から2時間程度を見込んでおくと良いでしょう。ゆっくりとお店を見たり、食べ歩きをしながら歩いたりすると、さらに時間がかかることも珍しくありません。
城下町散策のモデルコース
効率よく城下町を楽しむためのモデルコースとしては、まず犬山城を見学してから城下町に下りてくるルートがおすすめです。天守閣からの眺望を楽しんだ後、三光稲荷神社や針綱神社に参拝し、その後本町通りを散策しながら食べ歩きを楽しむという流れが一般的です。
帰りは犬山駅に向かって歩きながら、気になるお店に立ち寄ることができます。全体で3時間から4時間程度あれば、犬山城と城下町を十分に楽しむことができるでしょう。
犬山城周辺の神社仏閣と文化施設
犬山城の周辺には、歴史ある神社仏閣や文化施設が数多く点在しています。城の見学と合わせてこれらのスポットを訪れることで、犬山の歴史と文化をより深く理解することができます。ここでは、特におすすめの周辺施設を紹介していきます。
三光稲荷神社とハートの絵馬
犬山城の城山の麓に位置する三光稲荷神社は、縁結びのパワースポットとして近年特に人気を集めています。この神社は犬山城主・成瀬家の守護神として古くから信仰されてきました。
最大の特徴は、ピンク色のハート型絵馬です。赤い文字で「縁」と書かれたこの絵馬は全国的にも珍しく、恋愛成就を願う参拝者、特に若い女性やカップルから絶大な人気を誇っています。境内には無数のハート絵馬が奉納されており、フォトジェニックなスポットとしてもSNSで話題となっています。
また、境内には「銭洗い池」もあり、ここでお金を洗うと金運がアップするとされています。「恋みくじ」や「おもかる石」など、様々な開運スポットがあり、参拝だけでも楽しめる神社となっています。
針綱神社の歴史と御利益
三光稲荷神社に隣接する針綱神社は、犬山城の守護神として祀られている由緒ある神社です。安産・子授け・八方除・厄除などの御利益があるとされ、地元の人々からも厚い信仰を集めています。
毎年4月に開催される「犬山祭」は、この針綱神社の祭礼として行われるものです。祭りの期間中は、神社周辺が特に賑わいを見せます。
国宝茶室「如庵」と有楽苑
犬山城から徒歩圏内にある「日本庭園 有楽苑」は、国宝茶室「如庵(じょあん)」を有する日本庭園です。如庵は、織田信長の弟であり茶道の大成期に活躍した織田有楽斎(うらくさい)が建てた茶室で、日本に現存する国宝茶室三棟のうちの一つとされています。
有楽苑は、著名な建築家・堀口捨己の監修のもとに整備された日本庭園で、四季折々の美しい風景を楽しむことができます。園内の茶室「弘庵」では、犬山焼の器で抹茶をいただくことができ、ここでしか味わえない和菓子「有楽風」も提供されています。
【豆知識】織田有楽斎と茶の湯
織田有楽斎は、織田信長の13歳年下の弟で、本名を長益といいます。千利休に茶道を学び、利休七哲(りきゅうしちてつ)の一人に数えられる茶人でした。東京の「有楽町」という地名は、織田有楽斎の屋敷があったことに由来するとも言われています。
どんでん館と犬山祭の車山
犬山市文化史料館の別館である「どんでん館」では、国の重要無形民俗文化財に指定されている「犬山祭」の車山(やま)を見ることができます。館内には4輌の車山が常設展示されており、祭礼以外の時期でも間近で車山を観察することができます。
「どんでん」という名称は、犬山祭で車山が方向転換する際の動作に由来しています。車山を曳く手古衆(てこしゅう)が掛け声とともに車山の片側を持ち上げて回転させる様子は、祭りの見どころの一つとされています。
館内では、光と音による演出で犬山祭の一日を体感することができ、実際の祭りの雰囲気を味わうことができます。
犬山市文化史料館とからくり人形
犬山市文化史料館では、犬山の歴史や文化に関する資料が展示されています。特に注目すべきは、からくり人形に関する展示です。犬山祭の車山には、13輌すべてに精巧なからくり人形が載せられており、これは犬山祭の大きな特色の一つとなっています。
史料館では、このからくり人形の仕組みや歴史について学ぶことができ、実際のからくりの動きを見ることができる展示もあります。
犬山の車山の特徴
犬山祭の車山は、他地域の山車とは異なる独自の構造を持っています。一般的な山車が2層構造であるのに対し、犬山の車山は3層構造となっており、これは「犬山型」とも呼ばれています。
最下層がお囃子所、最上層にはからくり人形が置かれ、中層の「中山」は最上層のからくりを操作する層となっています。この独自の構造により、精巧なからくり人形の演技と囃子の音色が一体となった、他に類を見ない祭りの風景が生み出されているのです。
四季で楽しむ犬山城の風景
犬山城は、四季を通じてそれぞれ異なる美しい表情を見せてくれます。春の桜、夏の緑、秋の紅葉、冬の雪景色と、訪れる季節によって全く違った風景を楽しむことができるのも犬山城の大きな魅力です。ここでは、各季節の見どころと、おすすめの時期について解説します。
春:桜と犬山祭の競演
犬山城の春は、何といっても桜の季節がハイライトです。犬山城を中心に、木曽川河畔一帯には約400本の桜が植えられており、例年3月下旬から4月上旬にかけて見頃を迎えます。
特に人気なのが、天守と桜を一緒に撮影できるスポットです。城と桜の組み合わせは、日本の春を象徴する風景として、多くの写真愛好家を惹きつけています。夜間にはライトアップも行われ、夜桜と天守の幻想的な風景を楽しむことができます。
また、4月の第1週末には「犬山祭」が開催されます。豪華絢爛な車山が桜並木の城下を練り歩く光景は、春の犬山を代表する風物詩となっています。ユネスコ無形文化遺産にも登録されたこの祭りは、全国から多くの観光客を集めます。
夏:木曽川鵜飼いと遊覧船
夏の犬山では、1300年以上の歴史を誇る木曽川鵜飼いが楽しめます。開催期間は例年6月1日から10月15日までで、鵜匠が10羽の鵜を巧みに操り、鮎などの川魚を捕らえる伝統漁法を間近で見ることができます。
夜の鵜飼いでは、ライトアップされた国宝犬山城を背景に、かがり火の揺らめく中で繰り広げられる幻想的な光景を楽しむことができます。観覧船は鵜飼船のすぐ近くまで寄ることができ、かがり火の熱気を感じられるほどの臨場感があります。
木曽川では日本で唯一の「昼鵜飼」も行われており、日中に鵜飼いを見学したい方にもおすすめです。遊覧船から眺める犬山城と木曽川の風景は、夏の思い出として格別なものとなるでしょう。
秋:紅葉に彩られる城郭
秋の犬山城は、紅葉の名所として知られています。見頃は例年11月中旬から12月上旬にかけてで、天守前広場のモミジやイチョウが鮮やかに色づきます。
特におすすめなのが、登閣道の紅葉です。石畳の階段が紅葉のアーチで包まれ、まるで絵画のような美しい景色が広がります。天守へと続く道を歩きながら、秋の深まりを感じることができます。
また、有楽苑の紅葉も見逃せません。日本庭園と紅葉の組み合わせは、日本の秋の美を凝縮したような風景です。抹茶をいただきながら、色づく庭園を眺める時間は格別です。
| 季節 | 見どころ | 見頃時期 |
|---|---|---|
| 春 | 桜・犬山祭 | 3月下旬~4月上旬 |
| 夏 | 木曽川鵜飼い | 6月1日~10月15日 |
| 秋 | 紅葉 | 11月中旬~12月上旬 |
| 冬 | 雪景色・初詣 | 12月~2月 |
冬:凛とした佇まいの天守
冬の犬山城は、観光客が比較的少なく、ゆっくりと見学を楽しむことができる季節です。空気が澄んでいるため、天守からの眺望もクリアで、遠くの山々まで見渡すことができます。
稀に雪が降ることもあり、雪化粧をした犬山城は格別の美しさを見せます。白い雪に覆われた天守と木曽川の風景は、日本の冬の情緒を感じさせる光景です。
また、新年には周辺の神社での初詣客で賑わいます。三光稲荷神社や針綱神社への初詣と合わせて犬山城を訪れる人も多く、新年の清々しい空気の中での城郭散策もおすすめです。
ベストシーズンの選び方
犬山城を訪れるベストシーズンは、目的によって異なります。桜と城の風景を楽しみたいなら3月下旬から4月上旬、犬山祭を見たいなら4月第1週末、鵜飼いを体験したいなら夏季、紅葉を楽しみたいなら11月中旬から12月上旬がおすすめです。
混雑を避けてゆっくり見学したい場合は、平日や冬季がおすすめです。いずれの季節に訪れても、それぞれの魅力を発見できるのが犬山城の特徴と言えるでしょう。
犬山城周辺の人気観光スポット

犬山市とその周辺には、犬山城以外にも多くの魅力的な観光スポットがあります。犬山城観光と組み合わせることで、より充実した一日を過ごすことができます。ここでは、特に人気の高い周辺観光施設を紹介します。
博物館明治村の魅力
博物館明治村は、明治時代の歴史的建造物を移築・保存した野外博物館です。敷地内には60棟以上の建物が立ち並び、そのうち11棟が国の重要文化財に指定されています。
園内では、明治時代にタイムスリップしたかのような体験ができます。蒸気機関車や路面電車への乗車体験、明治時代の衣装を着ての記念撮影、当時のレシピを再現した食事など、五感で明治を感じることができるプログラムが用意されています。
特に人気なのが、旧帝国ホテル中央玄関です。フランク・ロイド・ライト設計の建物を移築したもので、その独特の建築美は一見の価値があります。犬山城から車で約20分の距離にあり、歴史好きの方には特におすすめのスポットです。
野外民族博物館リトルワールド
リトルワールドは、世界各地の伝統的な家屋を移築・復元した野外民族学博物館です。愛知県犬山市と岐阜県可児市にまたがる広大な敷地に、23カ国32の家屋が立ち並んでいます。
一周約2.5キロメートルの周遊路を歩きながら、世界各地の建築様式や生活文化を学ぶことができます。本館展示室には約6,000点もの民族資料が展示されており、世界の文化を幅広く理解することができます。
また、各国の料理を味わえるレストランや、民族衣装の体験コーナーもあり、「見て、食べて、体験して」一日世界旅行を楽しむことができます。愛犬と一緒に入園できることも特徴の一つです。
【豆知識】リトルワールドの建築物
リトルワールドに展示されている建物の多くは、実際に現地で使用されていた本物の伝統建築物です。世界各地から買い付けて移築されており、伝統建築物の展示件数では日本有数の規模を誇っています。建物だけでなく、その土地の生活用品や民族衣装なども展示されており、各国の文化を総合的に学ぶことができます。
日本モンキーパーク
日本モンキーパークは、遊園地と動物園が一体となった複合施設です。約60種類、850頭以上の霊長類を飼育しており、サルの種類の多さでは世界屈指とされています。
遊園地エリアには、子供から大人まで楽しめるアトラクションが揃っており、家族連れに人気のスポットとなっています。犬山城観光と組み合わせて、一日を通して楽しむことができます。
木曽川遊覧と船上からの眺め
木曽川では、鵜飼い以外にも遊覧船を楽しむことができます。船上から眺める犬山城は、陸上からとは異なる角度で城の美しさを堪能できます。季節ごとに異なる川岸の風景と、水面に映る天守の姿は、忘れられない思い出となるでしょう。
遊覧船は鵜飼いシーズン以外も運航されており、気軽に木曽川の風景を楽しむことができます。特に桜や紅葉の季節には、船上からの花見や紅葉狩りが人気です。
犬山温泉でリラックス
観光の疲れを癒すなら、犬山温泉がおすすめです。木曽川沿いには温泉旅館が点在しており、日帰り入浴が可能な施設もあります。天然温泉に浸かりながら、木曽川と犬山城を眺める贅沢な時間を過ごすことができます。
宿泊して翌日の観光に備えるのも良い選択です。夜には対岸からライトアップされた犬山城を眺めることができ、日中とは異なる幻想的な城の姿を楽しむことができます。
周辺観光の組み合わせプラン
半日コースであれば、犬山城と城下町の散策に集中するのがおすすめです。1日コースなら、午前中に犬山城と城下町を見学し、午後は博物館明治村またはリトルワールドを訪れるプランが人気です。
1泊2日であれば、初日に犬山城周辺を観光し、翌日は明治村やリトルワールドをじっくり楽しむことができます。夏季であれば、夕方から鵜飼いを楽しむプランも組み込めます。
犬山城へのアクセスと観光情報
犬山城を訪れる際に必要な、アクセス方法、営業時間、入場料金などの実用的な情報をまとめました。事前に確認して、スムーズな観光計画を立てましょう。
電車でのアクセス
犬山城への最寄り駅は、名鉄犬山線の「犬山駅」または「犬山遊園駅」です。名鉄名古屋駅から犬山駅までは急行または準急で約25分、中部国際空港駅からは約1時間でアクセスできます。
犬山駅から犬山城までは徒歩約20分です。城下町を散策しながら歩くことができるため、この道のりも観光の一部として楽しむことができます。犬山遊園駅からは徒歩約15分で、木曽川沿いのルートを通って城に向かうことができます。
車でのアクセスと駐車場情報
車で訪れる場合は、周辺に複数の駐車場が整備されています。主な駐車場は以下の通りです。
| 駐車場名 | 収容台数 | 犬山城まで | 料金 |
|---|---|---|---|
| 第一駐車場 | 140台 | 徒歩約5分 | 1時間300円(最大1,800円) |
| 第二駐車場 | 123台 | 徒歩約8分 | 1時間300円(最大1,800円) |
| 第三駐車場 | 150台 | 徒歩約20分 | 1時間200円(最大料金なし) |
第一駐車場・第二駐車場の営業時間は、平日8:30~21:00、土日祝日8:00~21:00となっています。週末や観光シーズンは混雑が予想されるため、早めの到着がおすすめです。
入場料金と営業時間
犬山城の営業時間と入場料金は以下の通りです。
営業時間:9:00~17:00(最終入場16:30)
入場料金(現行):
- 一般(高校生以上):550円
- 小・中学生:110円
※2026年3月1日より料金改定
- 一般(高校生以上):1,000円
- 小・中学生:200円
休城日は12月29日~31日ですが、天候や工事などにより臨時休城となる場合もあるため、訪問前に公式サイトで確認することをおすすめします。
観光モデルコース
効率よく犬山を楽しむためのモデルコースを紹介します。
【半日コース(約4時間)】
- 10:00 犬山遊園駅到着
- 10:30 犬山城見学(所要時間約40分~1時間)
- 11:30 三光稲荷神社・針綱神社参拝
- 12:00 城下町でランチと食べ歩き(所要時間約1時間30分~2時間)
- 14:00 犬山駅から帰路へ
【1日コース(約8時間)】
- 9:00 犬山遊園駅到着
- 9:30 犬山城見学
- 10:30 周辺神社参拝・有楽苑散策
- 12:00 城下町でランチと食べ歩き
- 14:00 博物館明治村またはリトルワールドへ移動
- 14:30~17:00 施設見学
- 17:30 帰路へ
混雑を避けるコツ
犬山城は特に週末、祝日、桜や紅葉のシーズンに混雑します。混雑を避けるためのコツをいくつか紹介します。
- 開城時間の9:00に合わせて到着する
- 可能であれば平日に訪問する
- 桜や紅葉シーズンを避けて訪問する
- 夏季や冬季は比較的空いている
特に天守への入場は、混雑時には1時間以上の待ち時間が発生することもあります。時間に余裕を持った計画を立てることが大切です。
バリアフリー情報
犬山城は歴史的建造物であるため、バリアフリー対応には限界があります。天守内の階段は非常に急で、車椅子での見学は困難です。また、城山への登り道も勾配があり、足の不自由な方には移動が大変な場合があります。
ただし、城下町や周辺の神社、駐車場などは比較的アクセスしやすく、天守の外観を眺めることは可能です。介助が必要な場合は、事前に公式サイトで詳細を確認することをおすすめします。
まとめ:国宝犬山城で歴史と文化を体感する旅
犬山城は、約440年の歴史を今に伝える貴重な国宝天守です。その建築的価値だけでなく、周辺に広がる城下町、神社仏閣、そして四季折々の美しい風景と相まって、訪れる人々に深い感動を与えてくれます。
犬山城観光の魅力を振り返る
犬山城の最大の魅力は、現存天守としての歴史的価値と、それを取り巻く豊かな観光資源にあります。天守最上階の廻縁から望む360度のパノラマビュー、江戸時代の町割りを残す城下町での食べ歩き、縁結びの神社としての三光稲荷神社など、多彩な楽しみ方ができるのが特徴です。
また、博物館明治村やリトルワールドなどの周辺施設と組み合わせることで、1日から2日かけてじっくりと観光を楽しむことができます。春の桜、夏の鵜飼い、秋の紅葉、冬の雪景色と、季節ごとに異なる表情を見せてくれるのも、繰り返し訪れたくなる理由の一つです。
訪問前に確認しておきたいポイント
犬山城を訪れる際は、以下のポイントを確認しておくとスムーズです。
- 営業時間:9:00~17:00(最終入場16:30)
- 入場料:一般550円、小中学生110円(2026年3月より改定予定)
- アクセス:名鉄犬山駅から徒歩約20分
- 所要時間:天守見学約30~40分、城下町含め3~4時間
- 混雑予想:週末・祝日・桜や紅葉シーズンは混雑
歴史を感じる特別な体験
犬山城を訪れることは、単なる観光を超えた歴史体験となります。織田信康による築城から、成瀬家による400年近い統治、そして現代に至るまでの長い歴史の中で、この城は日本の激動の時代を見守り続けてきました。
急な階段を上り、約440年前の木材に囲まれた空間を歩き、最上階から木曽川を見下ろす時、私たちは過去と現在をつなぐ特別な瞬間を体験することができます。国宝に指定された理由を、その目で確かめてみてください。
犬山城への旅を計画しよう
名古屋から約25分というアクセスの良さも、犬山城の魅力の一つです。日帰りでも十分に楽しめますが、周辺施設も合わせて訪れるなら1泊2日の旅程がおすすめです。
歴史好きの方はもちろん、グルメ、写真撮影、パワースポット巡りなど、様々な目的で楽しむことができる犬山城。ぜひ一度、国宝天守の魅力を体感してみてはいかがでしょうか。
よくある質問(Q&A)
Q. 犬山城の見学にはどのくらい時間がかかりますか?
A. 天守閣の見学のみであれば30分から40分程度です。城下町の散策や食べ歩きも含めると、3時間から4時間程度を見込んでおくと良いでしょう。混雑時は天守への入場待ちで時間がかかることもあります。
Q. 犬山城は雨の日でも楽しめますか?
A. 天守内の見学は雨天でも可能です。ただし、廻縁(回廊)に出る際は濡れる可能性があり、雨天時は閉鎖されることもあります。城下町の散策は傘があれば楽しめますが、悪天候時は周辺の博物館などを訪れるプランもおすすめです。
Q. 犬山城に駐車場はありますか?
A. はい、周辺に複数の駐車場があります。第一駐車場(140台)は城まで徒歩約5分、第二駐車場(123台)は徒歩約8分です。料金は1時間300円で、1日最大1,800円となっています。週末や観光シーズンは混雑するため、早めの到着がおすすめです。
A. 城下町では「串グルメ」が名物です。五平餅、だし巻きたまご、味噌田楽などが人気です。スイーツでは「恋小町団子」や「紫いもシェイク」などフォトジェニックな商品も多く、食べ歩きを楽しむことができます。
Q. 犬山城を訪れるベストシーズンはいつですか?
A. 目的によって異なります。桜を楽しみたいなら3月下旬から4月上旬、犬山祭を見たいなら4月第1週末、鵜飼いを体験したいなら6月から10月、紅葉を楽しみたいなら11月中旬から12月上旬がおすすめです。混雑を避けたい場合は、平日や冬季が比較的空いています。

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